クリスタルラインと名付けられた道をご存知だろうか?
秩父山系と八ヶ岳という関東北部の名高い山地を結ぶ、全長68.1kmに及ぶ観光道路である。観光道路というものが法的に定義されるものなのか俺は知らないが、このようなホームページまであるのだから観光向けに整備されているのは間違いなく、したがって観光道路なのだと俺は解釈している。
少し前にちょっとした間違いでその大部分を走ってしまったことがあるが、今回、このクリスタルラインの全区間走破それ自体をツーリングの目的としてみることにした。
なにせこのクリスタルライン、舗装路ではあるが林道である。70kmに迫る林道というのは実にアドベンチャー感たっぷりでなんとも唆られるものがあるではないか。
今回は久々に、最初から現状で唯一のツーリング仲間であるP君と待ち合わせてのツーリングだ。なにせ、携帯の電波もろくに届かず、行き交う人もほとんどない山の中を68kmにわたり走るのだ。さすがに一人は心細い。というか、もし途中でコケて走行不能などになると実に厄介だ。P君はヘタレだが、だからこそ俺の無理を抑制してもくれるだろう。
最初の集合場所はライダーにとっては奥多摩の玄関口とも言えるであろう古里のセブンイレブン。と、思っていたのだが、途中の街道でP君を発見したので、その少し前のセブンに入って一休みとしてしまった。
とりあえず朝飯にとパンと唐揚げ棒と買い、コーヒーを買って一息。ツーリング限定の喫煙者として、1ヶ月ぶりくらいの煙草にも火をつける。不健康ではあるが、これで「ツーリング来たな」という気分的なスイッチも入るのだ。
途中、俺が余裕こきすぎてガス欠しかけるなどの小さなトラブルはありつつも、やがて奥多摩湖。
実に天気がいいが、実に普通な感じの奥多摩湖。見飽きた景色にも見えるが、実は10年以上ぶりではないだろうか。前回に奥多摩湖まで来たのがいつか思い出せないが、それはまだ娘がいなかった頃のはず。その娘は、この前まで赤ちゃんだと思っていたがもう9歳。・・・時の経つのは本当に早い。こんな調子で10年、また10年、と経っていけばあっというまに俺にもお迎えが来ちまうだろう。刹那的になるつもりはないが、若い頃の時間を無駄にしたと少しでも思うなら、今からの時間は無駄にしないという気持ちをもつことが建設的だ。少なくとも、年寄りを気取るのはまだ早い。だが、そんな、若い頃には思いもしなかったようなことを考える年にはなった。
と、感慨深げに書いてみるも、実際はヘルメットすら脱がずに写真を1枚とって奥多摩湖を通り過ぎる。
これまた懐かしい大菩薩峠。大学生の頃に何度かツーリングで来ていて、記憶の中ではもっと長く険しい峠だったが、なんだかあっけないほどすぐに柳沢峠についてしまい、降ってしまった。基礎体力は衰えつつあるはずだが、「バイクで峠を越える」という能力は今の方が高まっているらしいw。
甲府付近まで出て、フルーツラインあたりがちょっとわかりにくかったが、さほど迷うこともなく道の駅花かげの郷まきおかに到着。
だいぶ暑くなってきたが、こんな真夏の陽気こそがクリスタルラインには相応しいという気がしていた。売店を覗くと、惣菜パンがうまそうで、しかもやけに安い。さっき朝飯を食ったばかりではあるが、フィッシュサンドとレーズンラスクを買い、P君と分けてつまむ。さらにチキンカツサンドを買い、全長70km近い林道を走破するにあたっての糧食とした。
道の駅を出てすぐ、トンネルを抜けるとクリスタルラインの入り口がある。
写真のオレンジの看板によく見ると「クリスタルライン→」という文字が見える。ちょっと地味だが、まあいい。さいたま市から奥多摩、大菩薩峠と超えてきたが、ここまではリエゾン区間に過ぎない。いよいよ本番だ。
最初のわずかな区間だけは住宅街。だが、すぐに景色はプロヴァンス風に変わる。
甲府といえば果樹栽培、とくに葡萄と、その葡萄から作られるワインは有名だ。
青い葡萄が瑞々しい。
もちろん俺は南仏に行ったことなどない。ワインはよく飲むが、たいていは安いチリワインだ。しかし、この青空と葡萄の木々、段々の畑の縁を飾る白い石垣。これが南仏でなくてどこが南仏であろうか。
ということで南仏ツアーを終えて、クリスタルラインを北上する。北上する先は乙女湖だ。
この乙女湖までの道はかなり舗装もきれいで、二車線な上にガラ空きなので走りやすい。クリスタルラインという観光道路的な呼称のイメージを裏切らない快走路だ。ただ、舗装のとくによいあたりでは真ん中にポールがあるので、調子にのってバンクしているとたまにぶつかりそうになって焦る。また、状態が全体に良いとはいえ、所詮は不人気道路なので、時々急に舗装が痛んでいる箇所があったりするので注意だ。
そして辿り着く乙女湖は、二度目だがやはりこれといって特徴のないダム湖で、・・・なんつうか、まあいいやという気分になる。
乙女湖を反時計回りにまわり込むようにして、いよいよクリスタルラインの主要部分に差し掛かる。
道幅はぐっと細くなり、そもそも通行する車両もいなくなる。
乙女湖までは登山や観光農園?などの客がわりと訪れていて、人がいつもいるのだが、そこから先は何せ人がいない。道があり舗装はされているということ以外に人の気配がしなくなる。
金峰山、なのだろうか。谷が深く目には見えないが、足元からは川の水音がする。おそらくは荒川の源流域というそれだろう。
道の駅まきおかで買っておいたチキンカツサンドは、確か150円だったと思うが実にうまかった。谷に足を投げ出すようにして食う飯は実に気分がいい。今度はここでカップ麺でも食いたいなと思った。
さて、クリスタルラインの続きだ。
乙女湖あたりの綺麗な舗装の面影はなく、道は一車線かそれ以下といった風情、落石に落葉、枯れ枝、苔。山側から葉っぱや枝が張り出していることもしばしば。
すっかり「林道」の風情。クリスタルという言葉の煌びやかなイメージはどこかへ消え失せ、むしろファイナルファンタジー的なクリスタルのイメージが脳内にチラついてくる。危険な道を乗り越えて人里離れた山深くに突き進み辿り着くクリスタルの聖地、みたいな。
見つけるとなぜか嬉しいホタルブクロ。俺が子どもの頃に、開発著しかった川崎の近所にはもう生えていなかったし、 「大きな一年生と小さな二年生」という児童文学の金字塔で桃源郷のような宝物のように登場していたものだから、何か特別なものを感じてしまう。
あの話は子どもの頃にも好きだったが、今思うと、むしろ最近の児童文学では禁じ手になっているような、すごい萌え要素?のようなものがあると思うんだよ。ホタルブクロの群生を見て宝物と思う可憐さをうちに秘めたいつも勝気な少女が、ついに粗暴な上級生の暴力に屈して初めて涙を見せる時、守られるだけだった「ぼく」は初めて抑えていた力を解放させる、みたいな。いやよく覚えてないけど、だいたいそんな話じゃなかったかな?
そして進めば今度は、人間の業の深さを見せつけるかのような光景。何を作っているのか何の手入れなのか、どれほど重要なのかさほど重要ではないのか、それはぱっと見で判断はできない。ただ、景色としては実に「自然破壊」を象徴している。
デイダラボッチとか出てくるのではないか、いや、こうなったらもう出てこないのかも、とか思ってしまう景色だ。
まあ実際、こんなところで何してんだろ?伸びすぎた杉でも切ったのかな?とは言えなんであれ、シャレや冗談でこんな山奥で作業しているわけではないとは思うので、実際は短絡的にこれを非難する気はない。
クサソテツ?ともかくこの植物がクリスタルラインの主要部分にはよく生えている。なんだかジュラ紀っぽくて楽しい。
ありがちな橋のあるこの場所は、クリスタルライン後半の分岐点。このまま進めば増富ラジウム温泉に行ってしまい、そのまま国道に抜けられるがクリスタルラインを完走はできない。クリスタルラインはこの橋のすぐ手前(甲府から来て)で右への分岐を行かねばならない。
橋のすぐ近くに駐車場があり、「クリスタルライン案内図」もある。
我々の目的はクリスタルラインの完全走破なのだが、ここでちょっと寄り道をすることにした。このまま進み増富ラジウム温泉を抜けるあたりに「廃校喫茶」なるレトロでロハスでサブカルオシャレくさい雰囲気満点のカッフェがあるらしいので、行ってみることにした。なにせ、Pくんは学校が大好きだ。彼が好きなのは本物の学校ではなく二次元世界の理想化された学園であろうが、まあこういう施設ならどちらかというとそちら側だろうから、きっと楽しめることであろう。
ここから増富温泉に至る道は通仙渓と呼ばれる穏やかな渓流で、日本の渓谷として主流な谷底を滝のように流れるものではなく、山間に少し開けた林間に蛇行する流れで、わかる人にはわかる異国情緒がある。俺が一言で表現するなら「ティモテっぽい」、そういう感じだ。今年、20年近い時を超えてティモテが復活したらしいから、今度シャンプー切れたら買ってこよう。
増富温泉の集落を抜けて、あれ?このまま抜けちゃう?と思うあたりで道端に注意してれば見落とさない程度の看板があり、廃校喫茶へ到着。
派手なフルカウルがまったく似合わない佇まいの、「フィトンチッド」。そもそもクリスタルラインの公式ホームページでも、(樹木が放つ成分としての)フィトンチッド推しなのだ。ともかくこのあたりはフィトンチッドが名物なのであろう。何もない村などはだいたい、何もないということを最大限美しく表現した「森と清流ときれいな空気の村」などというキャッチコピーをつけがちだが、それをもう少し近代的に言うとフィトンチッドが豊かということになるのだろう。
店内に入ると、だいたい予想してた通りのオシャレなアンティーク風インテリア。ただ、都会のそれと違うのは、屋根の高い木造の建物で、この暑い時期にエアコンなしで窓を開け放っているのに心地よい涼しさであり、かつ窓から雑踏の音や電車の音やクラクションや緊急車両のサイレンが聞こえてくるこはなく、代わりに風に揺れる木の葉のさざめきであるとか、蝶の舞う音までもがひらひらと聞こえてきそうなほどの静けさがあるというこだ。レトロ雑貨はある意味で「学校」から完全に逸脱しているのだが、 小学二年まで当時、市内最後の木造校舎で学んでいた俺には、この空気感こそはノスタルジーそのものだった。
こればかりは、都会のオシャレ喫茶がレトロ家具を揃えただけではどうあっても再現できまい。
そして、なぜか猫がいた。
猫カフェか?
2匹の猫がいて、猫らしく昼寝していた。が、隣に俺が座ると目を覚まし、当然のように膝にのって丸まった。かわいい。猫という生き物は非常にかわいい。人に媚びるのではなく、あたりまえの権利のように人の膝に潜り込んでくる様が、まるで赤子のようではないか。
そう言えば、大学生の頃はいつも学内の大きな噴水のある広場の端でひとり弁当を齧っていたなあ。そうすると猫が寄ってくるのだ。アニメならそこで変わり者の美少女の一人や二人は寄ってくるのだろうが、そういうことはついぞ無かった。けど、猫も十分にかわいかった。
そんなオシャレかつリリカルかつノスタルジックなカフェで、俺はアイスコーヒーとサンドイッチを頼んだ。サンドイッチは、量的にはそれなりの食べごたえがある。暑い中を走ってきた身には、付け合わせのピクルスもうまかった。ただ、なんつうかすげえヘルシーな味で、美味いとは思ったが「肉もっと欲しいな」と思ってしまったのは事実だ。少し蒸し鶏っぽいものが入ってはいたけど。 まあ、そこは仕方ないだろう。具自体はたっぷりあったのだ、ヘルシーな野菜系で。
とはいえ、この日は暑く、距離も走って体力の消耗が激しかったので、ここで変に重たいものではなくさっぱりと野菜中心の食事をしたのは実際は悪くはなかったかもしれない。
さて、少し休んで猫も撫でたので、5kmほど戻りみずがき山方面への分岐に入り、再びクリスタルラインへ。
が、ここでアクシデント。この日は梅雨の晴れ間で1日晴れの予報だったのだが、まさかの雨が降り出した。レインウェアは持ってきていないし、まともに雨宿りできる場所も見当たらず。まあ、それに気候からして多少は濡れても平気かなというのもあったので、酷くなったらどこでも退避しようということで進むことに。
びしょ濡れになりそうでならない絶妙な雨具合。路面状況からすると、少し前には激しく降ったのかもしれない。しかし峠をひとつ越えたら晴れた。
そんなこんなでわたわたしているうちに、みずがき山を越えて黒森の集落へ。しばらくまともな舗装路(生活道路的な)を走り、右への分岐で林道三沢高須線に入らなければいけない。だが、この分岐は危うく見落とすところだった。
前半は分岐には常にオレンジの看板で「クリスタルライン→」みたいな指示があったのだが、どうもこのあたりに来て看板が杜撰になってきている。重要なところに案内がなかったり。クリスタルライン整備促進協議会がこのあたりで力尽きたのだろうか。
もしこれからあなたが行かれるならば、「岩屋堂」の案内は道端にあったので、それを目印にするとよい。
その分岐を入った先が、これまた「え?間違った?」と確実に思うほどに細い。
バイクならばまあ走ることには差し支えない。けどUターンは相当きついだろう。車なら両側面から張り出す草でボディの両サイドにはクリスタルラインの思い出をたっぷり刻み込むはめになるだろう。
しばらく進むと左側に「岩屋堂」という寂れた看板を見つけた。Pくんに止まれと合図したたのだが、彼は「行け」と受け取ったようで走り去ってしまった。けど俺は見てみたかったので、バイクを路肩に止めて山の斜面の踏み分けを100mほど下ってみる。
元・お土産屋?的な小屋は完全に苔むしていた。岩に穴があり、間口に門が建てつけてある。秩父のどこかでも見た覚えがあるなこういうの。
その門もガタガタで、裏には古い落書きが大量に。
賽銭箱すら朽ちて倒壊しかかっていたが、一応ポケットの小銭を投げて手を合わせておいた。ここの神はきっと参拝者に飢えているだろうから、大きなご利益があるに違いない。
祠にはコウモリが舞っていた。
案内もあるし、何か売ってたかのような小屋もあったので、昔は、少しは賑わっていたのだろうか。ここまで来る道も酷道は酷道だが、全線舗装ではあるし、昔よりきっとずいぶん来やすくなっているだろうに、こうして寂れてしまうところというのも多々あるのだな。
岩屋堂を出て発進し、しばらく走ると少し広くなった道端でPくんが待っていた。
そこからしばらく走ると、おもむろに山を抜けた。
完全に平地であり、人々の生活圏だ。だが、まだクリスタルラインは終わってはいない。
むしろここからが難しかった。ここまでは山の中の一本道でたまに分岐があるだけだったが、ここからは普通に農村集落内なので、交差点やY字路などあり、もはやクリスタルラインの「ク」の字も出ない。
クリスタルライン公式HPの詳細マップPDF(http://crystal-line-guide.info/img/04map-screen72.pdf)をiPhoneにダウンロードしておいたし、もはや電波も届いているので、マップとiPhoneのグーグルマップを比較しつつ、なんとかクリスタルラインを辿る。
そしてついに、全長68.1kmに及ぶフィトンチッド溢れる林間コース、水晶産出地でもある山梨が一押しするアドベンチャーロード、クリスタルラインの終着点に辿り着いた。
・・・だよな?
ただの住宅地であって、看板のひとつもない。なんとも達成感を感じられないゴールである。
とりあえず出たところでバイクを止め、Pくんと地図など確認し、公式ホームページを見てみると、北杜市側入り口としてまさにこの場所の写真が掲載されている。
やはりここでいいらしい。
いや、なんでも税金を使うのがいいとも思わないよ。けど、ホームページも作って、途中にもあれだけ看板作ったんだからさ。最後くらい、もうちょっと達成感を感じられるような看板とか、ちょっとした駐車場くらいあってもよくない?
終点の位置をもう少し山側に移してでもさ。
お役所企画の半端さが見え隠れするクリスタルラインであった。
全線走破の感想としては、わりと面白かった。もう一回走ってもいいかも思うくらい。今度来るなら、途中に見かけた「森のラーメン屋さん」にチャレンジしたい。
甲府側の入り口から乙女湖に至るあたりの綺麗な道が、進むにつれてどんどん狭く心細くなっていく様も面白いし、なにせこの道は普通の車はまず走らないので、まずいつ来てもガラガラだろうと思われるのも良い。
ここから先をどう行くか決めていなかったのだが、とりあえず国道を北上。なんだか周囲の雲行き怪しく、雷さえ聞こえる。雨雲レーダーを確認すると、自分の走っているところのすぐ両脇だけ見事に豪雨だった。
結局、ぶどう峠から秩父に抜けて帰ろうということになったのだが、そのための道がまた微妙に遠回りばかりなんだよなと思いつつ地図をよく見ると、ツーリングマップルで白い道だが、 海ノ口というところからトンネルを通って県道2号方面に抜ける近道があるではないか。
地図でもわかるトンネルの立派さからするに、バイパスとして近年に整備された道だろうと思われるのでそれで行くことにした。予想はアタリで、空いていて綺麗な舗装の道をびやっと走って一気に北相木村に抜けた。
ここからはしばらくは快走路で、やがてぶどう峠に至る。
ぶどう峠には山梨と埼玉の県境があり、この県境を界に舗装の質もガラッと変わる(つなぎ目の写真とればよかった)。埼玉側の舗装は荒れており、ミューも小さい感じで、しかも下りなので、山梨側からこの峠を走ってくると埼玉の県政に疑問を覚えざるを得ない。
中津川林道も直さないし。
秩父は都心方面から来ると行き止まり感があって、ちょっとドライブの自由度が少ない。抜けて山梨の別荘地まで行きやすくした方が、ぜったいに秩父全体の集客にも良い効果があると思うのだけどなあ。
そんなこんなでぶどう峠を下ってくると、もう少しで国道299に出るあたりの「浜平温泉しおじの湯」の前でまさかの通行止め!
おい!ここから佐久まで戻れってか!?とキレかけたが、よく見たら迂回路があった。
が、ぶどう峠を一気に下ってきて、というか佐久からわりと一気でここまできての疲れがバイクを一度止めたらどっと出てきてしまった。
P君がおいついて来るのを待ち、しおじの湯での休憩を提案。ひさびさにツーリング先で温泉に入ることにした。
風呂は空いていて、のんびりと温まることができた。大広間の隅で少しだけ仮眠をとって、HP、MPともにだいぶ回復。最近は仕事がやたら忙しかったせいで、7分だけタイマーをかけて仮眠して回復、仕事を再開といった戦士のような生活をしており、その忌々しいスキルがここで役立ったかたちだ。
その後は、土坂峠から合角ダムを通って小鹿野へ。なにか目新しい飯どころはないかと少し探したが、飯屋はみな閉まるのが早く、ファミレス以外では完全に飲み屋な店しか見当たらず、結局また東大門に行ってわらじかつを食ってしまった。まあ、腹減ってたし、がっつりしてて美味かったけど。わりともう何度も食ってるんだよなあ。
飯を食って満腹になるといよいよ疲れが出てくる。急ぎ芦ヶ久保まで走り、そこで最後の休憩をしてP君と別れる。
そこから先は、俺はもはや闇の奥武蔵グリーンラインで都幾川に抜け、バイパスから圏央道というルートでさいたまに帰る。
P君は、いつもは暗い峠は怖いといって国道299で帰るのだが、今日は山伏峠から青梅に抜けて帰ると、妙なやる気を最後に出していた。
免許歴の浅いP君は、これまで暗い峠を走ることは少ないし、俺と走っている時はたいがい後ろにいる。なので、先輩として「夜の峠をバイクで先頭走ってると、マジで動物が出るから気をつけろよ」と警告しておいてあげようと思った。だが、俺は疲れていたので、まあ言わずもがなだな、と、喋るエネルギーを節約してしまった。
夜のグリーンラインはもちろん真っ暗だが、俺のNinja250SLはバルブをイエローの高効率バルブ(車検対応品)に替えてあるので、ハイビームで走っていればわりと見える。
もちろん昼間の数倍の慎重さは求められるが、飛ばしすぎなければさほど怖い目にも遭わない。それでもたまに前方をイタチだかタヌキだかが横切ったりはする。P君は大丈夫かなあ、と思ったりしたが、まあ杞憂だろうと忘れて進む。
知っている道なこともあり、以外とあっけなくR254バイパスに抜ける。もう遅いので一気に帰ろうと、そのまま川島ICまで走り圏央道へ。
最初のSAで最後の休憩をとる。ふとiPhoneを見ると、P君からメッセージが届いていた。
「事故った」
え?
おいおい、帰ったら(それぞれ個別で)美味いビールを飲もうなと約束したではないか。
まあ、メールできるなら死んではいないのだろうが・・・。
「鹿と」
へ?
・・・その後に聞いたところによると、山伏峠あたりで前方に鹿を発見。避けて後ろを通り過ぎようとしたら、まさにその瞬間、パニクったらしい鹿が突然反転してバイクの側面に体当たりしてきたそうな。
ヨロけたものの転倒には至らず、「鹿とバイクに挟まれた足が痛い」程度だったそうだ。
ただ、わりと凄い衝撃だったようで、バイクのサイドカウルは割れて、その割れたところに鹿の毛がごっそりと挟まったままになっている写真が送られてきた。
「鹿が雌で助かりました・・・雄だったら、今頃は毛ではなく角が生えていたところです」
とか言われて笑ってしまったが、よく考えるとシャレにもなってない・・・本当に悪運の強い奴だ。
なんか最後に変なオチをつけられてしまったが、そこからは30分ほどで帰宅。
実に420kmを超える走行距離、しかもそのほとんどが一般道の峠道という、なかなか手応えのあるコースを無事走破した充実感。ビールは「一番搾り 埼玉に乾杯」。これは、埼玉県民でなくても普通にうまいと思う。さっぱりして華やかな香りがある。この時期だからなおさら良いのかも。
2本ほど飲んで、寝た。
ここのところは土日もなく仕事をしていたのだが、この日は本当にぐっすり眠れた。そして翌日には外腿あたりが筋肉痛であった。
秩父山系と八ヶ岳という関東北部の名高い山地を結ぶ、全長68.1kmに及ぶ観光道路である。観光道路というものが法的に定義されるものなのか俺は知らないが、このようなホームページまであるのだから観光向けに整備されているのは間違いなく、したがって観光道路なのだと俺は解釈している。
少し前にちょっとした間違いでその大部分を走ってしまったことがあるが、今回、このクリスタルラインの全区間走破それ自体をツーリングの目的としてみることにした。
なにせこのクリスタルライン、舗装路ではあるが林道である。70kmに迫る林道というのは実にアドベンチャー感たっぷりでなんとも唆られるものがあるではないか。
今回は久々に、最初から現状で唯一のツーリング仲間であるP君と待ち合わせてのツーリングだ。なにせ、携帯の電波もろくに届かず、行き交う人もほとんどない山の中を68kmにわたり走るのだ。さすがに一人は心細い。というか、もし途中でコケて走行不能などになると実に厄介だ。P君はヘタレだが、だからこそ俺の無理を抑制してもくれるだろう。
最初の集合場所はライダーにとっては奥多摩の玄関口とも言えるであろう古里のセブンイレブン。と、思っていたのだが、途中の街道でP君を発見したので、その少し前のセブンに入って一休みとしてしまった。
とりあえず朝飯にとパンと唐揚げ棒と買い、コーヒーを買って一息。ツーリング限定の喫煙者として、1ヶ月ぶりくらいの煙草にも火をつける。不健康ではあるが、これで「ツーリング来たな」という気分的なスイッチも入るのだ。
途中、俺が余裕こきすぎてガス欠しかけるなどの小さなトラブルはありつつも、やがて奥多摩湖。
なんてことない奥多摩湖 |
と、感慨深げに書いてみるも、実際はヘルメットすら脱がずに写真を1枚とって奥多摩湖を通り過ぎる。
これまた懐かしい大菩薩峠。大学生の頃に何度かツーリングで来ていて、記憶の中ではもっと長く険しい峠だったが、なんだかあっけないほどすぐに柳沢峠についてしまい、降ってしまった。基礎体力は衰えつつあるはずだが、「バイクで峠を越える」という能力は今の方が高まっているらしいw。
甲府付近まで出て、フルーツラインあたりがちょっとわかりにくかったが、さほど迷うこともなく道の駅花かげの郷まきおかに到着。
だいぶ暑くなってきたが、こんな真夏の陽気こそがクリスタルラインには相応しいという気がしていた。売店を覗くと、惣菜パンがうまそうで、しかもやけに安い。さっき朝飯を食ったばかりではあるが、フィッシュサンドとレーズンラスクを買い、P君と分けてつまむ。さらにチキンカツサンドを買い、全長70km近い林道を走破するにあたっての糧食とした。
道の駅を出てすぐ、トンネルを抜けるとクリスタルラインの入り口がある。
クリスタルライン、甲府側入り口 |
最初のわずかな区間だけは住宅街。だが、すぐに景色はプロヴァンス風に変わる。
甲府のぶどう畑 |
甲府といえば果樹栽培、とくに葡萄と、その葡萄から作られるワインは有名だ。
青い葡萄が瑞々しい。
もちろん俺は南仏に行ったことなどない。ワインはよく飲むが、たいていは安いチリワインだ。しかし、この青空と葡萄の木々、段々の畑の縁を飾る白い石垣。これが南仏でなくてどこが南仏であろうか。
ということで南仏ツアーを終えて、クリスタルラインを北上する。北上する先は乙女湖だ。
乙女湖 |
そして辿り着く乙女湖は、二度目だがやはりこれといって特徴のないダム湖で、・・・なんつうか、まあいいやという気分になる。
乙女湖を反時計回りにまわり込むようにして、いよいよクリスタルラインの主要部分に差し掛かる。
クリスタラインは原則として1車線以下 |
道幅はぐっと細くなり、そもそも通行する車両もいなくなる。
乙女湖までは登山や観光農園?などの客がわりと訪れていて、人がいつもいるのだが、そこから先は何せ人がいない。道があり舗装はされているということ以外に人の気配がしなくなる。
ナイスポジションがあったので早めのランチ |
金峰山、なのだろうか。谷が深く目には見えないが、足元からは川の水音がする。おそらくは荒川の源流域というそれだろう。
道の駅まきおかで買っておいたチキンカツサンドは、確か150円だったと思うが実にうまかった。谷に足を投げ出すようにして食う飯は実に気分がいい。今度はここでカップ麺でも食いたいなと思った。
すっかり舗装もショボくなる |
乙女湖あたりの綺麗な舗装の面影はなく、道は一車線かそれ以下といった風情、落石に落葉、枯れ枝、苔。山側から葉っぱや枝が張り出していることもしばしば。
すっかり「林道」の風情。クリスタルという言葉の煌びやかなイメージはどこかへ消え失せ、むしろファイナルファンタジー的なクリスタルのイメージが脳内にチラついてくる。危険な道を乗り越えて人里離れた山深くに突き進み辿り着くクリスタルの聖地、みたいな。
ヤマホタルブクロ |
あの話は子どもの頃にも好きだったが、今思うと、むしろ最近の児童文学では禁じ手になっているような、すごい萌え要素?のようなものがあると思うんだよ。ホタルブクロの群生を見て宝物と思う可憐さをうちに秘めたいつも勝気な少女が、ついに粗暴な上級生の暴力に屈して初めて涙を見せる時、守られるだけだった「ぼく」は初めて抑えていた力を解放させる、みたいな。いやよく覚えてないけど、だいたいそんな話じゃなかったかな?
そして進めば今度は、人間の業の深さを見せつけるかのような光景。何を作っているのか何の手入れなのか、どれほど重要なのかさほど重要ではないのか、それはぱっと見で判断はできない。ただ、景色としては実に「自然破壊」を象徴している。
説明を追加 |
まあ実際、こんなところで何してんだろ?伸びすぎた杉でも切ったのかな?とは言えなんであれ、シャレや冗談でこんな山奥で作業しているわけではないとは思うので、実際は短絡的にこれを非難する気はない。
クサソテツ?ともかくこの植物がクリスタルラインの主要部分にはよく生えている。なんだかジュラ紀っぽくて楽しい。
ありがちな橋のあるこの場所は、クリスタルライン後半の分岐点。このまま進めば増富ラジウム温泉に行ってしまい、そのまま国道に抜けられるがクリスタルラインを完走はできない。クリスタルラインはこの橋のすぐ手前(甲府から来て)で右への分岐を行かねばならない。
橋のすぐ近くに駐車場があり、「クリスタルライン案内図」もある。
我々の目的はクリスタルラインの完全走破なのだが、ここでちょっと寄り道をすることにした。このまま進み増富ラジウム温泉を抜けるあたりに「廃校喫茶」なるレトロでロハスでサブカルオシャレくさい雰囲気満点のカッフェがあるらしいので、行ってみることにした。なにせ、Pくんは学校が大好きだ。彼が好きなのは本物の学校ではなく二次元世界の理想化された学園であろうが、まあこういう施設ならどちらかというとそちら側だろうから、きっと楽しめることであろう。
ここから増富温泉に至る道は通仙渓と呼ばれる穏やかな渓流で、日本の渓谷として主流な谷底を滝のように流れるものではなく、山間に少し開けた林間に蛇行する流れで、わかる人にはわかる異国情緒がある。俺が一言で表現するなら「ティモテっぽい」、そういう感じだ。今年、20年近い時を超えてティモテが復活したらしいから、今度シャンプー切れたら買ってこよう。
廃校喫茶フィトンチッド |
派手なフルカウルがまったく似合わない佇まいの、「フィトンチッド」。そもそもクリスタルラインの公式ホームページでも、(樹木が放つ成分としての)フィトンチッド推しなのだ。ともかくこのあたりはフィトンチッドが名物なのであろう。何もない村などはだいたい、何もないということを最大限美しく表現した「森と清流ときれいな空気の村」などというキャッチコピーをつけがちだが、それをもう少し近代的に言うとフィトンチッドが豊かということになるのだろう。
店内に入ると、だいたい予想してた通りのオシャレなアンティーク風インテリア。ただ、都会のそれと違うのは、屋根の高い木造の建物で、この暑い時期にエアコンなしで窓を開け放っているのに心地よい涼しさであり、かつ窓から雑踏の音や電車の音やクラクションや緊急車両のサイレンが聞こえてくるこはなく、代わりに風に揺れる木の葉のさざめきであるとか、蝶の舞う音までもがひらひらと聞こえてきそうなほどの静けさがあるというこだ。レトロ雑貨はある意味で「学校」から完全に逸脱しているのだが、 小学二年まで当時、市内最後の木造校舎で学んでいた俺には、この空気感こそはノスタルジーそのものだった。
こればかりは、都会のオシャレ喫茶がレトロ家具を揃えただけではどうあっても再現できまい。
そして、なぜか猫がいた。
猫カフェか?
2匹の猫がいて、猫らしく昼寝していた。が、隣に俺が座ると目を覚まし、当然のように膝にのって丸まった。かわいい。猫という生き物は非常にかわいい。人に媚びるのではなく、あたりまえの権利のように人の膝に潜り込んでくる様が、まるで赤子のようではないか。
そう言えば、大学生の頃はいつも学内の大きな噴水のある広場の端でひとり弁当を齧っていたなあ。そうすると猫が寄ってくるのだ。アニメならそこで変わり者の美少女の一人や二人は寄ってくるのだろうが、そういうことはついぞ無かった。けど、猫も十分にかわいかった。
とはいえ、この日は暑く、距離も走って体力の消耗が激しかったので、ここで変に重たいものではなくさっぱりと野菜中心の食事をしたのは実際は悪くはなかったかもしれない。
さて、少し休んで猫も撫でたので、5kmほど戻りみずがき山方面への分岐に入り、再びクリスタルラインへ。
が、ここでアクシデント。この日は梅雨の晴れ間で1日晴れの予報だったのだが、まさかの雨が降り出した。レインウェアは持ってきていないし、まともに雨宿りできる場所も見当たらず。まあ、それに気候からして多少は濡れても平気かなというのもあったので、酷くなったらどこでも退避しようということで進むことに。
びしょ濡れになりそうでならない絶妙な雨具合。路面状況からすると、少し前には激しく降ったのかもしれない。しかし峠をひとつ越えたら晴れた。
そんなこんなでわたわたしているうちに、みずがき山を越えて黒森の集落へ。しばらくまともな舗装路(生活道路的な)を走り、右への分岐で林道三沢高須線に入らなければいけない。だが、この分岐は危うく見落とすところだった。
前半は分岐には常にオレンジの看板で「クリスタルライン→」みたいな指示があったのだが、どうもこのあたりに来て看板が杜撰になってきている。重要なところに案内がなかったり。クリスタルライン整備促進協議会がこのあたりで力尽きたのだろうか。
もしこれからあなたが行かれるならば、「岩屋堂」の案内は道端にあったので、それを目印にするとよい。
その分岐を入った先が、これまた「え?間違った?」と確実に思うほどに細い。
黒森より西のクリスタルライン |
しばらく進むと左側に「岩屋堂」という寂れた看板を見つけた。Pくんに止まれと合図したたのだが、彼は「行け」と受け取ったようで走り去ってしまった。けど俺は見てみたかったので、バイクを路肩に止めて山の斜面の踏み分けを100mほど下ってみる。
岩屋堂 |
元・お土産屋?的な小屋は完全に苔むしていた。岩に穴があり、間口に門が建てつけてある。秩父のどこかでも見た覚えがあるなこういうの。
その門もガタガタで、裏には古い落書きが大量に。
岩屋堂の内部 |
祠にはコウモリが舞っていた。
案内もあるし、何か売ってたかのような小屋もあったので、昔は、少しは賑わっていたのだろうか。ここまで来る道も酷道は酷道だが、全線舗装ではあるし、昔よりきっとずいぶん来やすくなっているだろうに、こうして寂れてしまうところというのも多々あるのだな。
岩屋堂を出て発進し、しばらく走ると少し広くなった道端でPくんが待っていた。
そこからしばらく走ると、おもむろに山を抜けた。
クリスタルラインの最終局面 |
完全に平地であり、人々の生活圏だ。だが、まだクリスタルラインは終わってはいない。
むしろここからが難しかった。ここまでは山の中の一本道でたまに分岐があるだけだったが、ここからは普通に農村集落内なので、交差点やY字路などあり、もはやクリスタルラインの「ク」の字も出ない。
クリスタルライン公式HPの詳細マップPDF(http://crystal-line-guide.info/img/04map-screen72.pdf)をiPhoneにダウンロードしておいたし、もはや電波も届いているので、マップとiPhoneのグーグルマップを比較しつつ、なんとかクリスタルラインを辿る。
そしてついに、全長68.1kmに及ぶフィトンチッド溢れる林間コース、水晶産出地でもある山梨が一押しするアドベンチャーロード、クリスタルラインの終着点に辿り着いた。
クリスタラインの終着点 |
・・・だよな?
ただの住宅地であって、看板のひとつもない。なんとも達成感を感じられないゴールである。
とりあえず出たところでバイクを止め、Pくんと地図など確認し、公式ホームページを見てみると、北杜市側入り口としてまさにこの場所の写真が掲載されている。
やはりここでいいらしい。
いや、なんでも税金を使うのがいいとも思わないよ。けど、ホームページも作って、途中にもあれだけ看板作ったんだからさ。最後くらい、もうちょっと達成感を感じられるような看板とか、ちょっとした駐車場くらいあってもよくない?
終点の位置をもう少し山側に移してでもさ。
お役所企画の半端さが見え隠れするクリスタルラインであった。
全線走破の感想としては、わりと面白かった。もう一回走ってもいいかも思うくらい。今度来るなら、途中に見かけた「森のラーメン屋さん」にチャレンジしたい。
甲府側の入り口から乙女湖に至るあたりの綺麗な道が、進むにつれてどんどん狭く心細くなっていく様も面白いし、なにせこの道は普通の車はまず走らないので、まずいつ来てもガラガラだろうと思われるのも良い。
ここから先をどう行くか決めていなかったのだが、とりあえず国道を北上。なんだか周囲の雲行き怪しく、雷さえ聞こえる。雨雲レーダーを確認すると、自分の走っているところのすぐ両脇だけ見事に豪雨だった。
結局、ぶどう峠から秩父に抜けて帰ろうということになったのだが、そのための道がまた微妙に遠回りばかりなんだよなと思いつつ地図をよく見ると、ツーリングマップルで白い道だが、 海ノ口というところからトンネルを通って県道2号方面に抜ける近道があるではないか。
地図でもわかるトンネルの立派さからするに、バイパスとして近年に整備された道だろうと思われるのでそれで行くことにした。予想はアタリで、空いていて綺麗な舗装の道をびやっと走って一気に北相木村に抜けた。
ここからはしばらくは快走路で、やがてぶどう峠に至る。
ぶどう峠には山梨と埼玉の県境があり、この県境を界に舗装の質もガラッと変わる(つなぎ目の写真とればよかった)。埼玉側の舗装は荒れており、ミューも小さい感じで、しかも下りなので、山梨側からこの峠を走ってくると埼玉の県政に疑問を覚えざるを得ない。
中津川林道も直さないし。
秩父は都心方面から来ると行き止まり感があって、ちょっとドライブの自由度が少ない。抜けて山梨の別荘地まで行きやすくした方が、ぜったいに秩父全体の集客にも良い効果があると思うのだけどなあ。
そんなこんなでぶどう峠を下ってくると、もう少しで国道299に出るあたりの「浜平温泉しおじの湯」の前でまさかの通行止め!
おい!ここから佐久まで戻れってか!?とキレかけたが、よく見たら迂回路があった。
が、ぶどう峠を一気に下ってきて、というか佐久からわりと一気でここまできての疲れがバイクを一度止めたらどっと出てきてしまった。
P君がおいついて来るのを待ち、しおじの湯での休憩を提案。ひさびさにツーリング先で温泉に入ることにした。
風呂は空いていて、のんびりと温まることができた。大広間の隅で少しだけ仮眠をとって、HP、MPともにだいぶ回復。最近は仕事がやたら忙しかったせいで、7分だけタイマーをかけて仮眠して回復、仕事を再開といった戦士のような生活をしており、その忌々しいスキルがここで役立ったかたちだ。
その後は、土坂峠から合角ダムを通って小鹿野へ。なにか目新しい飯どころはないかと少し探したが、飯屋はみな閉まるのが早く、ファミレス以外では完全に飲み屋な店しか見当たらず、結局また東大門に行ってわらじかつを食ってしまった。まあ、腹減ってたし、がっつりしてて美味かったけど。わりともう何度も食ってるんだよなあ。
飯を食って満腹になるといよいよ疲れが出てくる。急ぎ芦ヶ久保まで走り、そこで最後の休憩をしてP君と別れる。
そこから先は、俺はもはや闇の奥武蔵グリーンラインで都幾川に抜け、バイパスから圏央道というルートでさいたまに帰る。
P君は、いつもは暗い峠は怖いといって国道299で帰るのだが、今日は山伏峠から青梅に抜けて帰ると、妙なやる気を最後に出していた。
免許歴の浅いP君は、これまで暗い峠を走ることは少ないし、俺と走っている時はたいがい後ろにいる。なので、先輩として「夜の峠をバイクで先頭走ってると、マジで動物が出るから気をつけろよ」と警告しておいてあげようと思った。だが、俺は疲れていたので、まあ言わずもがなだな、と、喋るエネルギーを節約してしまった。
真っ暗な白石峠 |
夜のグリーンラインはもちろん真っ暗だが、俺のNinja250SLはバルブをイエローの高効率バルブ(車検対応品)に替えてあるので、ハイビームで走っていればわりと見える。
もちろん昼間の数倍の慎重さは求められるが、飛ばしすぎなければさほど怖い目にも遭わない。それでもたまに前方をイタチだかタヌキだかが横切ったりはする。P君は大丈夫かなあ、と思ったりしたが、まあ杞憂だろうと忘れて進む。
知っている道なこともあり、以外とあっけなくR254バイパスに抜ける。もう遅いので一気に帰ろうと、そのまま川島ICまで走り圏央道へ。
最初のSAで最後の休憩をとる。ふとiPhoneを見ると、P君からメッセージが届いていた。
「事故った」
え?
おいおい、帰ったら(それぞれ個別で)美味いビールを飲もうなと約束したではないか。
まあ、メールできるなら死んではいないのだろうが・・・。
「鹿と」
へ?
・・・その後に聞いたところによると、山伏峠あたりで前方に鹿を発見。避けて後ろを通り過ぎようとしたら、まさにその瞬間、パニクったらしい鹿が突然反転してバイクの側面に体当たりしてきたそうな。
ヨロけたものの転倒には至らず、「鹿とバイクに挟まれた足が痛い」程度だったそうだ。
ただ、わりと凄い衝撃だったようで、バイクのサイドカウルは割れて、その割れたところに鹿の毛がごっそりと挟まったままになっている写真が送られてきた。
「鹿が雌で助かりました・・・雄だったら、今頃は毛ではなく角が生えていたところです」
とか言われて笑ってしまったが、よく考えるとシャレにもなってない・・・本当に悪運の強い奴だ。
なんか最後に変なオチをつけられてしまったが、そこからは30分ほどで帰宅。
実に420kmを超える走行距離、しかもそのほとんどが一般道の峠道という、なかなか手応えのあるコースを無事走破した充実感。ビールは「一番搾り 埼玉に乾杯」。これは、埼玉県民でなくても普通にうまいと思う。さっぱりして華やかな香りがある。この時期だからなおさら良いのかも。
2本ほど飲んで、寝た。
ここのところは土日もなく仕事をしていたのだが、この日は本当にぐっすり眠れた。そして翌日には外腿あたりが筋肉痛であった。
はじめまして、いつもブログを見させて頂いてます。
返信削除5月に大型からZ250SLに乗り換えたばかりですので、色々と参考にさせて頂いてます。
先月、山伏峠近くの上名栗付近で私も鹿2頭と衝突しそうになり、ヒヤッとしたものです。以前はこの辺りでの野生動物との遭遇は少なかったのですが、エサが不足しているせいか遭遇率が高くなった気がします。
コメントありがとうございます。
返信削除Z250SLですか!良いですね。私も本当はそちらを買おうとしていたのですが、在庫処分で安くなっていたNinjaにしてしまいました。どちらにせよ、SLで走る秩父は楽しいですが、鹿には気をつけるとしましょう 。